オンライン英会話スクールの中でも急成長中のQQ Englishというサービスがあります。
月額5,000円程度で毎日レッスン(1回約170円)を受けられる他社サービスが乱立するなか、約3,000円でだいたい6回(1回約500円)のレッスンです。レッスン単価が倍以上という強気の価格設定です。すべての講師が国際英語教授資格(TESOL)を保持していることや、PPPメソッド、カランメソッドと呼ばれる固有の学習方法を売りとしていて、さらに日本人によるサポート、24時間営業、TOEIC対応等、品質と付加価値を高めて差別化することで、高い料金設定でも競争力を獲得するビジネス戦略のようです。

QQ Englishのホームページ
私も、こちらのサービスを約4ヶ月間利用してみました。しかし、残念ながら私には合っていないようで、中止することにしました。どうも効果がないような気がしているのと、なによりレッスンがつまらないからです。
オンライン英会話スクールに限らず、どのような商売でも独自の強みを作り、差別化することでビジネスを有利に展開できます。そのような冷めたビジネス的視点でQQ Englishのアピールする内容を見たとき、実効性のない口先は通用しなくなります。つまり、どんなに良さげに言っても結果がなければ意味がなく、本質を見破られるということです。
以下には、私が実際に利用して感じた、QQ Englishの良かった点、良くなかった点を正直に書いていきたいと思います。
今、QQ Englishを検討している方や、すでにご利用中の方等、一個人の感想として、ご覧ください。
評判のオンラインカランメソッドの効果
QQ Englishの代表的カリキュラム、カランメソッド。
カランメソッドとは、簡単に言うと、講師の質問に定型的な文体ですばやく回答することを反復練習して、英語を話せるようになることを目指すというものです。宣伝文句を挙げると、カランメソッドはイギリスのカランスクール本校という伝統と実績のある語学学校で、長期にわたり、開発、運用されてきたもので、正確かつ実践的な英語が身につくとされています。しかも、4倍早く英語が習得できるそうです。QQ Englishのウェブサイトや、ウェブ検索したり、YouTube等で探していただくともっと詳しい情報を見つけることができるでしょう。
特にQQ Englishはカランスクール本校の正式な認定を受けており、正統なカランメソッドのレッスンが受けられるということになっていて、専売特許のように言っています。

テキストの購入が必須
それはいいのですが、効果あるかどうかが問題です。
ひょっとするとQQ Englishのカランメソッドの運用方法にも問題があるのかもしれませんが、私が試したところとしては、これで英語を話せるようになるとは思えません。
レッスンでは、講師が言ったことを反復したり、カランメソッドのテキストを読まされたりします。そんなことをいくらやっても英語を話せるようにはならないと思います。英会話とは口を動かしたり、口から音を出すということだけではないからです。英会話は、口を動かすことなんかよりも、もっと難しいことを克服しなければならず、そこが最大の難関なのです。
say → speak → talk → conversation
英会話学習者の目標は英語を言う(say)ことでも、しゃべる(speak)ことでも、話す(talk)ことでもありません。英会話の最終目的は会話(conversation)であって、それはコミュニケーションすることです。
会話とは、相手が質問したことに、反射的に定型文を返すことではありません。意思の疎通をすることです。
カランメソッドでは、自分の言いたいことを話すトレーニングではなく、決まったフレーズを口から発することしかしません。そこには会話に必要な一連のプロセスが含まれていないのです。
■英会話
聞く → 聞いた内容から自分の意見を考える① → 英語の表現を思いつく② → それをしゃべる
■カランメソッド
聞く → カランメソッドの求める回答を考える → それをしゃべる
カランメソッドには、もっとも難くて一番鍛えなければならない英会話の①と②の過程がすっぽり抜け落ちています。その代わりカラン用の回答を考えることに置き換わっているのです。これではいくらやっても多くの人が悩んでいる肝心の①と②の能力が伸びません。
結局、カランメソッドとは英会話ではなく、求められる正しい回答をするゲームでしかないのです。
このゲームは正確に答える能力を鍛えます。例えば、冠詞とか三単現のsをつけることを忘れなくするのには効果があるかもしれません。しかし、コミュニケーションにおいて、それらの機微は致命的な問題ではありません。もちろんいつまでも間違った英語を言い続けることはよくないことですが、初期の段階で、そのような細かいことはおいておいても後々修正されていけばよいことです。
日本人が口から英語が出てこない本質的原因は、口から英語の発音ができないからではありません。表現したいことを英語として言えないからです。私の中でその原因や改善するアイディアの結論があるわけではありませんが、おそらくはフレーズや単語のボキャブラリー不足かもしれないと思っています。
ともかく、問題は口から出す音にあるのではありません。その証拠に、たとえ口から音を出さず、脳の中だけで完結させるとしても、表現したいことを瞬時に英語にすることができないものなのです。
もちろん、私は発音練習が不要だと言っているのではありません。カランメソッドを通してトレーニングできる副次的効果があることは承知しています。それ以前の問題を言っています。多くの場合、カタカナ英語ですら出ないのが英会話初心者ではないでしょうか。その解決方法が口から英語を発するトレーニングにあると誤解しているように思うのです。
付け加えると、決まったことをするだけのカランメソッドはつまらないレッスンです。
講師にとっても、時間をこなすだけのものでしかありません。口は疲れるでしょうが、ティーチングスキルはいりません。
カランメソッドとは、講師に一定の教授方法を習得させて、後は工夫の必要もなく、永続的かつ自動的に収穫できる英会話スクール経営者から見れば、おいしい商材に過ぎないのです。
スピードなんとかとか、エブリデイどうとかというような、どこにでもある英会話教材の話と同じで、ベルトコンベアー式に英会話スピーカーを量産する方法を確立できない現実をあらためて実感します。
これで話せる?PPPメソッド
QQ Englishには、PPPメソッドというのもあります。
教科書のようなテキストに沿って文法を体系的に学ぶものです。講師の説明で文法を学んだ後、語順の並び替えや穴埋め問題をして、理解を確かめます。カリキュラム名は「これで話せる英会話」となっています。これで本当に話せるようになるでしょうか?

無料ダウンロードして使えるPPPメソッドのテキスト
レッスン中、QQ Englishの講師はホワイトボードを活用して、それはそれは熱心に説明してくれます。すでに文法を知っている人にとっても、あらためて復習になりますし、作りこまれたテキストはよく考えられていると思います。
ただし、これをやってもやはり英語を話すことができるようにはなりません。文法を学んで話せるようになるのであれば、中学、高校をまじめに卒業した人は話せるようになっているはずです。
英語のことをよく知らない人が勘違いすることですが、文法を覚え、パズルを解くように文章を組み立てて会話ができるというわけにはいかないのです。
熱心に教えてもらって、楽しくない文法レッスンをがんばって受けても、人間の頭はよくできていて、使われないものは不要なものとして整理され、ものの数ヶ月で忘れてしまいます。
PPPメソッドを会話の実践に活かせるものに変えるには、自身の使う言葉に取り込み、長期間に渡って繰り返し使い続けなければなりませんが、PPPメソッドではそこまでケアするように設計されていません。さらに都合の悪いことにPPPメソッドのレッスン中、25分間の大部分を講師の文法解説に割かれてしまいます。ですので、話すトレーニングにはまったくなりません。
短期間に効率よく文法を学習できるという意味でPPPメソッドは大変優れていますが、同時にそういう一夜漬けは短期間で効率よく忘れます。
PPPメソッドは英会話を目的としないか、他で数倍の会話練習をする等、考えて使わなければ意味がありません。
こうした問題はQQ Englishに限らず、学校勉強をはじめとした多くの英語学習方法が正面から目を向けていない課題で、逆に考えると英会話向上のヒントなり、限界なりが見える糸口かもしれません。
後半へつづく→「
QQ Englishの講師(先生)と予約、キャンセル、退会の仕組み」
オンライン英会話にぴったりのSkype録画録音ソフト