2017年6月2日金曜日

失敗確実なプレミアムフライデーではなく実効性のある対策を

プレミアムフライデーという月末の金曜日に通常より早く仕事を切り上げる取り組みがあったが、最近はほとんど聞かなくなった。すでに虫の息だ。もともと成功率は低いと思って期待していなかったので驚きはないが、予想通りすぎて残念ではある。

午後3時頃に仕事を切り上げて、一杯飲みに行ったり、ショッピングを楽しんだりと、ささやかな時間を楽しんでほしいという趣旨だったようだが、まずこの趣旨からして現実的ではない。大半の人はとっとと家に帰るのが実際だろう。家に帰ってYouTubeでも見て過ごすだけである。しかし、それで構わない。消費活動による直接的な経済効果は単なる見せかけであって、この制度の真価は、労働時間の縮小や生産性の向上にあるのだ。単純に考えると労働時間を減らすと生産性が下がると考える人がいるかもしれない。だが、長時間労働が常態化すると、それが前提になり、非効率にだらだら時間をかけるだけで、短時間で仕事をこなす努力をしなくなる。仮に仕事をさっさと終わらせても、周囲が帰らないのであれば気まずくてどうせ帰ることができないし、下手に早く帰ったりすれば暇だと思われて仕事を増やされかねない。人事評価にも響き、出世や給与にもかかわってくる。どうせ帰れないのだから、生産性を向上させるモチベーションなどはなく、労働者は残業を見越して労働力を温存させ、昼間から手を抜きはじめる。こうした濃度の低い、スカスカの生産性を変えることにつながらなければ、あまり意味はない。
生産性を上げて労働時間を減らすことができれば、労働者も企業もそして日本という国も幸せになるはずだ。

プレミアムフライデーだが、月に一回というのではあまりにもインパクトが小さかった。毎週というのなら、まだ存在感があったし習慣化しそうだが、月一回では感覚的にほとんどないのと変わらない。社会へ問題になるようなインパクトを与えないようにということは分かるが、忘れさられるほどインパクトがなかった。せめて、将来的には、毎週、最終的には毎日やるつもりだというくらい言っておいてもらいたかった。
失敗してはダメなわけではなくて、いろんなことに挑戦したらいいと思うが、今回のことを前例として、どうせやっても無駄というような空気にはなって欲しくない。むしろ、もっと成功する見込みのある方法でなければならないという反面教師にしてもらいたい。

本当は、プレミアムフライデーよりも、もっと現実的な対策を行ってほしい。
たとえば、サービス残業の温床となっている時間外手当込みの給与体系を禁止したり、裁量労働制の悪用をできないようにするほうが効果がある。時間外手当込みの給与というのは例えば月40時間分の時間外手当を時間外労働せずとも給与にあらかじめ含めておくというものだ。時間外労働をしていないにもかかわらず時間外手当が支払われているとみなされ、労働者にとって得になると考えられるため、合法と解釈されている。なんのことはない、はじめから時間外手当分の給与を含むことを見越して基本給を下げているだけだ。
こうしたサービス残業の温床になっているものは、あらゆる逃げ道を完全にふさぐことが必要だが、どうせあの手この手で時間外手当の回避策を講じてくることが予想できる。しかし、そのことも予想できるのだから、そうした回避策についても、発生するたびに即座に禁止できる体制を作っておけばよい。
さらに、時間外手当を高額に設定し、時間外労働をすればするほど会社が損害を感じるようにしたほうがいい。会社はそれだけの費用をかけて時間外労働を命じる価値があるかどうかを勘案しなければならない。時間外労働をする労働者は会社にコストをかけさせる悪となり、あまりにも目に余るようであれば、人事評価にも悪影響がでるようになるべきである。
はじめから給与を少なく設定しておく等の方法で、時間外労働前提の給与体系にさせないために、時間外労働の多い会社は、毎月の時間外労働の累積に応じて手当の乗率を指数関数的に上げていき、時間外労働が常態化しているととんでもない時間単価を支払わなければならないようにするなどの対策も必要だ。
これらは、特別な対策を言っているように見えるかもしれないが、実は時間外手当の趣旨そのままの実効性を持つようにするということだ。

毎日定時にきっちり帰る人と、毎日恒常的に残業をしている人では、現在の日本では、後者の方が評価される。後者のような人はその人自身のことだけを見ると、時間外手当がもらえるし、残業してまで仕事をたくさんしているように見えるので会社からの評価も上がり、いいことずくめのように見える。しかし、広い視野で見たとき、このような人がいると労働者同士で残業競争になり、残業手当前提の低い基本給になっていたり、人事評価を意識してお互いが足を引っ張り合う構図を作ってしまう。そのような形で時間外労働を強いられる労働者は、先にも書いたように、効率よく仕事をするどころか、わざと効率を落として時間稼ぎをすることになる。よく見ていると、毎日残業している人もいつも同じような時間に帰宅していたりする。仕事にも波があるはずなので、早く帰宅する日があってもよさそうなものだが、実は帰る頃合いを見て調整しているのだ。普通に効率を考えて仕事をしても本当に毎日残業しなければならないほど仕事があるのだとしたら、そもそも仕事の割り振りに問題がある可能性があるので、それならそのような窮状を会社に訴えなければならない。しかし、おそらくは時計をチラチラ見ながらソリティアでもやりつつ残業の演技をしている。そういうことは、やっている本人にとっても、会社にとってもつくづく不幸である。