2019年6月12日水曜日

トランプさんはファーウェイ問題でパンドラの箱を開けてしまった

トランプさんの指示でファーウェイを排除する動きあります。当初Googleも協力するような姿勢を見せていたのですが、制裁に懸念を示し始めたようです。その理由としてセキュリティ上の問題を指摘していますが、それよりも独占体制を揺るがしかねないということの方が大きいです。

ファーウェイは、あらゆる事態に備えて準備しているらしく、スマホのOSについてもAndroidの代替手段を古くから考えてはいたようです。そのファーウェイ製スマホ用OSは「鴻蒙(Hongmeng)」というらしいです。現状においては、おそらくGoogleのAndroidに比較して使いにくいものなのだろうとは思います。あくまで現状は。

中国の国民は、アメリカ対中国という構図から、国民感情としてファーウェイを支持する強い動きがあるようです。中国は国内だけでも巨大な市場を持っています。もしもファーウェイ製OSを搭載したスマホが中国で普及したとしたら、中国国内での成長と収益源を後ろ盾にして、世界市場にも拡大してくることは間違いありません。
いまさら、GoogleがAndroidを提供すると申し出ても、こうしたことが現実に起こることを示した以上、中国は対策が必要であることをよく理解したことでしょう。それはAndroidOSだけのことにとどまらず、あらゆることについて警戒心を持たれることになります。
トランプさんは、中国の台頭によるアメリカの地位低下に、危機感があるのだと思います。アメリカは今現在の強い有利な立場を利用して、中国の成長の足を引っ張れると考えましたが、それは、結果、パンドラの箱を開けることになってしまいました。

Googleは、高利益の企業ですが、同時に現在の高利益を維持するのは、高コストでもあります。従業員に高い給料を払い続け、研究開発に投資しなければなりません。一方、ファーウェイはアメリカよりはまだ人件費の少ない中国の企業であり、なにより追いかける立場です。Google製のサービスを手本にできるファーウェイが人海戦術で追い付くのは速いです。Googleの機能を真似して取り入れるのは当然のことながら、ファーウェイ独自の付加価値もつけてくるでしょう。世界の目を意識したGoogleにはできなかった、なりふり構わない手段もとれます。
Googleとたいして変わらないか、場合によってはより高機能なものが、低価格で買えるとなれば、急成長中の新興国だけでなく、日本や韓国のような国でも、ユーザーは正直な行動をとります。

AndroidにはPlayストアと呼ばれるAndroidアプリを提供するプラットフォームがあります。それはもちろんGoogle製であり、広告も表示されていてGoogleの収益源の一部になっています。ファーウェイのOSでは、そうしたものはファーウェイのプラットフォームに代わります。広告収入というだけでなく、アプリを提供するプラットフォーム自体を持つことになれば、アプリの提供方法やアプリでできることを完全に掌握することになります。ファーウェイのスマホ上では、標準で使われる検索エンジンはGoogleではありません。中国企業の百度であったり、ファーウェイ独自のものになるでしょう。仮にGoogleを使うとしてもGoogleは下請けです。メールはGmailが標準ではありません。ファーウェイのアカウントを中心にサービス展開が行われることになります。
ファーウェイのスマホではファーウェイのサービスがオフィシャルなのであって、Googleがファーウェイ製のスマホ用にサードパーティーとして、Googleの各種サービスアプリを提供する立場になります。標準とサードパーティーでは、その影響力には圧倒的な差がでます。

いまや、誰もがスマホを使う時代であり、そのOSを握っていることが重要です。その肝心要の部分を持っていかれてしまえば、あとは雪崩を打つように、Googleの各種サービスがファーウェイのサービスに塗り替わっていきます。
検索エンジンというGoogleの屋台骨もろとも失ったGoogleは、急速に力を失い、最後にはファーウェイに吸収されてしまうかもしれません。
下手をすれば、これから訪れる5G時代は、ファーウェイの完全勝利になっていたりしそうです。

Appleもスマホ事業をしているものの、幅広さという点ではまだ弱いです。ウェブ検索、Youtube、広告配信等、多くのインターネットサービスをGoogleが事実上独占している状態にはどうだろうかと思っていました。ユーチューバーと呼ばれる人達が、極端に高額な報酬を得ている異様な状態なんかを見ていると、独占による歪みを見ることができます。Googleが得ている富を見ていると、独占によって、広告主や、ユーザーが過剰に搾取されているのではないかと思えてきます。
そういう点ではファーウェイが対抗してくれるのは、良いことではあります。もちろん、今度はファーウェイが独占状態になっては意味がありませんが、今回のことに学んで、Googleがすべてを支配している状況より、ましになるのなら、その方がよいのかもしれません。

私は、トランプさんのファーウェイに対する手段には以前から違和感を持っていました。日本人ですから、心情としては同盟国であるアメリカサイドを擁護したいですが、やり方には釈然としませんでした。
このファーウェイの問題は、数年後に振り返ってみると、とんでもない悪手だったとして、後悔することになっているのかもしれません。

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