2019年9月9日月曜日

高解像度VR HP ReverbでX-Plane 11を飛んでみた

HTC Viveを購入して、もう3年も経過しました。最近では、使っているのは、X-Plane11がほとんでです。
HTC Viveは出た当初から解像度不足が指摘されていましたが、同時期に発売されたOculus Riftも同じ解像度でしたので、その当時に製品化できるレベルはそんなもので仕方ないと納得していました。X-Plane11のようなフライトシミュレーターでは、コックピットの計器パネルの細かい文字を読める必要がありますが、HTC Viveのような低解像度では困難です。その対策として内部解像度を上げてしのいでいました。内部解像度というのは、フライトシミュレーターの描画を高解像度で行い、HMDのディスプレイへはそれを低解像度に縮小して表示するというものです。それによって解像感が向上します。

この3年間の間に、少し解像度が改善された後継機HTC Vive Proが発売され、Odyssey、Oculus Rift S、さらに大幅な解像度アップを実現したPimaxも登場し、今後はVive Cosmosという製品も発売されるようです。私は、初代HTC Viveの低解像度で我慢しつつ、そうした状況を見ながら、いつか性能と価格のバランスのとれた製品が発売されるのを待っていました。
そんなある日、海外のウェブサイトで、HP(ヒューレットパッカード)のReverbという高解像度で手ごろなWMRのHMDが話題になっているのを見かけました。日本でも日本HPから発売されており、価格はキャンペーンということもあいまって、最終的な支払い金額で言うと、49,486円でした。私にとって、なんとか許容できる範囲でしたので、購入することにしました。


HP Directplus -HP公式オンラインストア- にて購入。
9/1に発注して9/6に到着しました。おそらく在庫があったようで思ったより早かったですが、今時、在庫があるのなら翌日、下手をしたら当日に届いてもおかしくない時代ですから、HPのこういう動きの緩慢さはいかにも大手メーカーらしいです。配達業者はヤマト運輸なのでなにかと便利ではあります。

2019年9月現在の代表的なHMDのスペックは以下の通りです。
HTC ViveHTC Vive ProHTC Vive CosmosOculus RiftOculus Rift S
解像度(片目)1080×12001440×16001440×17001080×12001280×1440
視野角110度110度110度110度110度
リフレッシュレート90Hz90Hz90Hz90Hz80Hz
重量470g555g651g470g550g
実売価格¥89,000¥101,520699USD¥49,800
プラットフォームSteamVRSteamVRSteamVROculusOculus

Pimax 5K PlusPimax 8KOdyssey+Valve IndexHP Reverb
解像度(片目)2560×14403840×21601440×16001440×16002160x2160
視野角200度200度110度130度114度
リフレッシュレート90Hz80Hz90Hz80/90/120/144Hz90Hz
重量470g593g644g500g
実売価格¥88,738¥46,798日本未販売¥49,486
プラットフォームSteamVRSteamVRWMRSteamVRWMR

それぞれに一長一短があるため、一部分のみを強調してどれがいいとは言えません。どのHMDが一番良いかは、使う人の用途や何を望むかによって変わってきます。
私の場合は、X-Plane等のフライトシミュレーターで使いたいです。そうなると、
・計器パネルが読める高解像度
・視野角が広い
・長時間着用
といった点が重要になります。それでいうとPimax 8Kが第一候補になりそうです。Pimax 8Kは解像度が4K+4Kですので、解像度がもっとも高く、しかも視野角が200度もあるため、一番適しているように思えます。しかし、実はインターネット上のレビュー記事を見ていると、それよりも解像度が低いはずのPimax 5K Plusの方が文字の視認性が高いという結果が出ています。フライトシミュレーターにおいて、計器パネルの文字の読みやすさが重要ですのでそれでは意味がありません。文字の視認性は解像度だけではなく液晶パネルの特性も関係してくるようです。
では、Pimax 5K Plusが良いかというと、横方向の視野角が200度もあるということは、その分ピクセル密度が粗くなります。実際、縦方向は1440ピクセルしかありません。横方向の高解像度は視野角の拡大に費やされている格好です。
価格が高いのと、Amazonの商品レビューでトラブルが多そうなことも心配です。
そういうわけで、ずっと手を出すのは躊躇していました。

最近、海外のウェブサイトを読んでいてHP ReverbというHMDが存在することを知りました。日本でも買うことができます。
視野角は広くありませんが、解像度は縦横2160ピクセルあります。つまりピクセル密度が高いということです。PPIでは、Pimax 5K Plusが534、HP Reverbは1056になります。価格もPimaxよりはずっと安く、これこそが待っていたものではないかと思って、衝動的に飛びついてしまいました。


HP Reverbのハードウェア

到着したHP ReverbのHMDはシンプルな形状です。写真で見た時、前面がカーペットのようになっていて、触ると気持ちいいのかと思っていましたが、実際はそんなにふわふわしたものではありませんでした。

IPDをメカニカルに調節する機能がありませんので、両目の間の距離はソフトウェアでの調節のみに限定されます。使う人によっては、それが致命的な問題になることがあるかもしれません。
スピーカーが標準で付いています。HMDを被る時は、サイドに開いた状態で固定して、被りやすくできますし、使うときはバネで耳に押し付ける力がかかります。耳に当たるように位置や角度は自在に調節できます。音質は良くありません。オンイヤータイプなので、使っていると耳が痛くなってきます。

幸い、取り外すことができますし、ピンジャックが付いていて好きなヘッドフォンに変更することができます。

マイクはHMDの下側にあります。
眼鏡をかけて使うことができますが、眼鏡をかけたまま、さっと被るのは難しいと思います。

HP Reverbのコントローラー

コントローラーはWMRのもので、両手用に2つ付属しています。使いやすいものではありませんが、使えないことはありません。Viveコントローラーにもあった親指で操作するタッチパッドに加えてスティックが増えたのは、単純にありがたいです。このスティックとタッチパッドは同じ入力信号ではありませんので、別々の機能を割り当てることができます。フライトシミュレーターのように手元のボタンにいろいろ割り当てたい用途には便利です。

トラッキングの追従性は高いですが、HMDの前面カメラで捉えられない位置に持っていけばロストします。ルームスケールでゲームをするにはまったく不向きです。そのような用途ではViveやRiftをお勧めします。そもそもHMDのケーブルが3.5mしかありませんので、広いエリアでは使えません。
ひとつのコントローラーに2つの単3乾電池をセットします。そのため4つの単3乾電池が付属しています。この電池は3日でなくなってしまいましたので、充電式のバッテリーを交換用も含めて計8個用意しておくのがよさそうです。

HP Reverbのソフトウェア

WMR HMDですから、Windowsに接続すれば認識します。しかし、一度HMDをシャットダウンすると、Windowsを再起動しない限り、HP Reverbを再度使うことができなくなりました。これは、Windows10のバージョンを1803から1903にアップグレードすることで解決しました。
WMRのソフトは、使いやすいと思います。VRゲーム中にコントローラーのWindowsボタンを押すと、VR空間内にウィンドウが表れて、サウンドの音量を変えたり、他のアプリを起動したりできます。
WMRでSteamのアプリを使うには、Windows Mixed Reality for SteamVRをインストールする必要があります。X-Plane11で使うためにも必要です。

X-Plane 11での使用感

さっそくX-Plane 11で飛んでみました。
HMDのディスプレイ解像度が高いですから、計器パネルの文字を読むことができます。Zibo737のコックピットの機長席に座って、機長側のFMSは読めますが、副操縦士側のFMSはぼやけて読みにくいです。こうなってくると私の視力が原因でぼやけるのか、解像度が原因なのかが、分からなくなってきます。
HUDはかなり読みやすくなりました。


HTC Viveに比べて色味は全体的に薄くなります。言い換えると鮮やかさが少なくなります。例えば、夕焼けはViveのディスプレイの方がきれいに見えます。しかし、不自然に強調された濃い色でなくなるので、Ortho4xpの地形は、よりフォトリアリスティックとは言えます。黒が黒としてしっかり出ません。夜間飛行では、コックピット内に霧がかかったように白っぽくなります。そうした状況では明暗と色合いのコントラストがはっきりしたViveのディスプレイの方が、きれいに見えます。
雲は白く見えます。いや、雲が白いのは当たり前ですが、Viveの場合スクリーンドアエフェクトがあるため、全体的にざらついています。HP Reverbでは、なめらかな白い雲になります。そういう部分は見違えるようになります。
夜間の星空は、Viveの大きなドットの星ではなく、細かいドットになるので、HP Reverbの方が段違いです。見えなかったものも見えるようになります。着陸アプローチ時に滑走路の白いライトだけでなく誘導路へ導く青色のライトも見えるようになります。

思いがけないうれしい誤算ですが、体感フレームレートが上がりました。表示されるフレームレートの数値に違いはないのですが、体感的には確実に上がっています。シミュレーター内の時間の経過が早くなったようです。つまりViveの時は、時間が遅く進んでいたようです。ViveはCPUの負荷が大きいのかもしれません。WMRはWindowsネイティブで動くため、処理効率の面で有利なのだろうかと想像しています。


もはやフライトシミュレーターにVRは必須と言ってしまいます。周囲の景色、空間認識、コックピットの機器の操作等、次元が異なります。高解像度のHP Reverbも登場しましたが、まだ十分とは思いません。しかし、現状においてもすでに、通常のディスプレイに戻ろうという気になりません。機材と予算があるなら、フライトシミュレーターはVRをおすすめします。

HP Reverbは公式ストアから購入しました。
HP Directplus -HP公式オンラインストア-